神戸地方裁判所 平成4年(行ウ)20号 判決 1994年4月22日
原告
阪邊誠
右訴訟代理人弁護士
相馬達雄
被告
宝塚郵便局長田辺馨
右指定代理人
巖文隆
同
太田清一
同
城米賢一
同
中本薫
同
久埜彰
同
坂本忠總
同
森田賢
同
清水眞
同
西田恒彦
同
小河隆司
同
田中健
主文
一 被告が原告に対して平成二年二月八日付けでなした懲戒減給処分(平成四年一月二四日の人事院による判定により懲戒戒告処分に修正)を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の申立
一 原告
主文同旨
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二事案の概要
本件は、宝塚郵便局第二集配課に勤務する原告が、平成元年一二月一四日の昼の休憩時間中に、同局地下自転車置場において、同局第二集配課主任川本治雄(以下、「川本」という。)といさかいを起こした(以下、「本件事件」という。)ことから、被告により職場秩序を乱したとして、平成二年二月八日付けで、国家公務員法(以下、「法」という。)八二条一号及び三号並びに人事院規則一二―〇に基づき、懲戒減給処分(一か月間俸給の月額の一〇分の一を減給。以下、「本件処分」という。なお、本件処分は、原告の申立により、平成四年一月二四日、人事院において懲戒戒告処分に修正された。)に付されたため、原告がその取消を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 原告は、昭和六〇年五月二〇日、宝塚郵便局に採用され、本件事件当時同局第二集配課に郵政事務官として勤務し、郵便外務事務に従事していた。当時第二集配課の職員は課長を含めて、四二ないし四三名で、うち約三〇名は全日本郵政労働組合(以下、「全郵政」という。)に、約一〇名は全逓信労働組合、(以下、「全逓」という。)に所属しており、原告は全郵政宝塚塩瀬支部の執行委員長であった。他方、川本は全逓の組合員であり、原告と川本は、同じ課に所属していたが、親交はなかった。
2 平成元年一二月一四日午前八時四〇分ころ、第二集配課内において、全逓の組合員である坂井賢一(以下、「阪井」という。)と川本との間にいざこざがあり、阪井が激昂して川本の胸ぐらを掴むという暴力行為に及び、付近にいた職員が制止するという事件が発生した。その後、川本は、右暴力行為により受傷したとして、第二集配課課長の許可を得て病院で受診し、加療約三日間を要する胸部打撲の診断書を取得した(以下、診断書取得を含めてこの事件を「別件事件」という。)。
3 原告は、同日昼の休憩時間中の午後〇時三五分ころ、昼食を終えた後、地下食堂の自動販売機でコーヒーを買い、コーヒーの紙コップを右手に持って、食堂前廊下から地下自転車置場に至る出入口から同自転車置場内に入ったところで、川本と出会った。そして、その付近で、原告と川本は口論する等して若干の時間(長くても二分程度)争った(以下、この争いを「本件事件」という。)。
本件事件当時、たまたま同自転車置場内の離れた場所に第二集配課職員の栗林健治(以下、「栗林」という。)がいたが、これに気付いた原告と川村は、こもごも栗林に対し、「阪邊に蹴られた。」、「川本に蹴られた。」等と言って、相手から蹴られたかのような言動を示し、栗林に相手の暴力行為の存在を確認させようとしたが、栗林のいた位置からは、駐輪している単車等の陰になって原告らの下半身が見えなかったため、栗林は、右暴力行為の有無を確認していない。
4 川本は、本件事件後、原告から暴行を受けたと上司に申告した上で、病院で受診して加療五日間を要する右下腿打撲傷の受傷をした旨の平成元年一二月一五日付け診断書を取得し、更に、同月二〇日付けで同じく右下腿打撲傷により向後なお約七日間の加療を要する旨の診断書を取得した。
5 原告と川本の当時の直属の上司であった長野英世第二集配課課長は、本件事件後、原告と川本から本件事件についての事情聴取を行ったが、原告については、原告が蹴った事実を否認したので、短時間で事情聴取を打ち切り、後に自筆の顛末書を提出させた。
6 被告は、平成二年二月八日、原告が平成元年一二月一四日の休憩時間中、宝塚郵便局地階自転車置場において、川本とささいなことから口論し、暴言をあびせ、職場秩序を乱したとして、法八二条一号及び三号並びに人事院規則一二―〇に基づき、本件処分を行った。
原告は、本件処分を不服として、人事院に本件処分の審査請求を行ったところ、人事院は、平成四年一月二四日、本件処分を懲戒戒告処分に変更する旨の判定を行った。しかし、原告は、右判定をも不服として、本件訴えを提起した。なお、川本も本件事件により懲戒減給処分(その後、懲戒戒告処分に修正)を受けた。
二 争点
1 本件事件の法八二条一号及び三号の該当性
(一) 原告が川本の右足を蹴り、負傷させたか否か。
(二) 本件事件の際の言動が職場秩序を乱すものであったか否か。
2 本件処分の相当性
三 争点に対する当事者の主張
1 原告の主張
(一) 争点1(一)について
本件事件において、原告が川本に対して暴行を加えた事実がまったくないことは、人事院の判定も認めているとおりである。
本件事件の真相は、宝塚郵便局地下自転車置場の入口ドアの前で、原告と川本がぶつかり、双方の足が触れ合ったので、原告が「何をするのや」と言ったところ、川本が「何じゃ、泣きそうな顔をしやがって」と答えたので、原告が「何が泣きそうな顔や」と言い返し、これに対し、川本が、「お前なんか、郵便局辞めてしまえ」と言い返したので、原告も、「なんで俺が辞めなあかんねん。あんたこそ、辞めや」と言い返したのに過ぎず、時間的には数十秒程度の出来事であり、大声もだしていないし、掴み合いもしていない。その後、原告が、川本とすれ違って、前方へ五、六メートル程進んだとき、川本が後方から原告の前に回って来て、栗林に対して「蹴られた。蹴られた。栗林君みたやろ」と言ったので、原告も「蹴られた。蹴られた。川本に蹴られた」と一回言っただけであり、それも大声ではなかった。
(二) 争点1(二)について
前記(一)のとおり、本件事件は、部外者のいない地下自転車置場における休憩時間中の一分にも満たない極めて短い時間の一言、二言のやりとりにすぎないものである。しかも、その内容は暴言というようなものではなく、大声で口論したというものでもないのであるから、本件事件により職場秩序が乱されたとは到底いえない。
(三) 争点2について
本件事件は、前記のとおり、仕事中の職場内での行為でも、また、部外者の面前での行為でもなく、栗林以外には誰にも気付かれていないのであるから、本件事件により局の名誉、信用を害されたというようなことはないし、職場に混乱を生じたというようなこともない。しかも、郵便局は、上司が配達員を叱る際等には「やめてしまえ。」というような言葉が日常茶飯事のように発せられている職場であり、この点をも考慮すると、前記程度の言葉のやりとりがなされたことをもって、非違行為と評価し、懲戒処分を行った本件処分は、相当性を欠くことが明らかというべきである。
本件処分により、原告は、定期昇給のカット、昇進の遅延等の不利益を受けており、右不利益は、原告が郵便局に在職する限り付いて回るのであり、二言、三言の感情的発言をしただけで、このような重大な不利益処分を甘受しなければならない理由はない。
なお、本件処分をするに当たり、被告が行った調査は極めて不十分なものであって、原告と川本から簡単な事情聴取をしたに止まり、しかも、原告からは一回だけ、一〇分程度の事情聴取を行ったのみである。
本件処分が行われた真の理由は、宝塚局には二つの労働組合があって、以前は両組合の反目対立が激しかったことから、川本からの暴行の申述を受けて、別の組合に所属している原告と川本の両者について、とりあえず何らかの処分をしておくことが、両組合の摩擦防止のために有効と考えたためであると推測されるが、本件事故当時には、両組合間にはかってのような対立は存在せず、被告の右のような配慮は杞憂に過ぎず、本件処分が不当なことは明らかである。
2 被告の主張
(一) 争点1(一)について
本件事件の態様は、原告と川本とがすれ違った際、まず原告が川本に対し、「汚いやつやのう、お前みたいの辞めてしまえ。」と暴言を浴びせたため、川本が憤慨して「何言ってんのや。」等と言い返したことから、双方が大声で口論し、そのあげく、原告が川本の右足の向こう脛付近を右足で蹴り、加療約一二日間を要する傷害を負わせたというものである。
なお、原告は、これまでも川本に対し、組合間の対立を巡って再三にわたりいやがらせをしてきたものであり、さらに、本件事件に先立つ別事件も本件事件の背景事情、原告による右暴行の動機として挙げられる。
(二) 争点1(二)について
本件事件は、(一)記載のとおり、まず原告が川本に対して暴言を浴びせたことが契機となって発生し、暴言、罵声に等しい言葉でもって相当の時間(一、二分)大声で言い争った上、原告が川本の右下腿部を蹴って傷害を負わせたというものであり、かかる行為が職場秩序を紊乱し、公務員としての服務義務に反するものであることは明白であり、勤務時間の内外及び行為の場所のいかんを問わず、およそ社会通念に照らして許容されないものであることは明らかである。
なお、労働者の職場外非行について、職場外であるという一事でもって、懲戒処分の対象から除外されるものでないことは明らかであり、まして本件非違行為は、原告の勤務官署たる宝塚郵便局の庁舎内で行われたものであり、非違性がないとする原告の主張は失当というべきである。
(三) 争点2について
(1) 原告は本件処分のために定期昇給カットの不利益をうけたと主張するが、本来定期昇給は、優秀な成績で勤務したと所属長が証明した者に対してのみ行われるのであって、職員であれば何人に対しても当然に約束されているものではない。また、二級への昇格、主任への昇進、特別昇給等については、原告も既にその利益を受けているのであり、本件処分により、同僚との間に給与号俸等の差が生じたとしても、この差は郵政省と原告の所属する全郵政との間の「特別昇給の実施に関する協定付属覚書」に基づく特別昇給によって救済され得ることになっている。
(2) そもそも公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に非違行為があった場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するために科される制裁であり、懲戒処分を行うかどうか、いかなる処分を行うかは、懲戒権者の裁量に任されているものである。そして、懲戒権の行使としてなされた処分は、それが社会通念上、著しく妥当性を欠き、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められない限り、違法とはならないものであり、本件事件の行為の態様、将来の職場規律に与える影響等諸般の事情を考慮すれば、本件処分はむしろ軽きに過ぎるといってもよいものである。
四 争点に対する判断
1 非違行為判断の基礎となる事実
原告は、平成元年一二月一四日の昼の休憩時間中の午後〇時三五分ころ、宝塚郵便局地下一階南東寄りにある食堂で昼食をとった後、同所の自動販売機でコーヒーを買い、コーヒーの入ったコップを右手に持ち、同所から地下一階西南側にある自転車置場に至る廊下を自転車置場に向かって歩いて行った。そのころ、川本が地下一階北寄り中ほどにある休息室で昼食をすませ、自転車置場内を南に向かって歩いていたが、川本は、自転車置場の中央付近で、前記食堂で食事を終えて原告よりも一足先に自転車置場に出てきた栗林と出会った。両名は、軽く挨拶をして別れ、川本は自転車置場から食堂前廊下に通ずるドアの方へ、栗林は自転車置場西南寄りの階段の方へ向かった。川本が右ドアの前付近まで来た時、原告が右ドアを開けて自転車置場に入ってきたので、原告と川本は鉢合わせになり、そのため原告が手に持っていたコーヒーが若干こぼれ、そのことが発端になって、原告が「何をするんや。」と言ったのに対し、川本が「何じゃ、泣きそうな顔して何言うとんねん。」等と反論したり、互いに郵便局を「辞めてしまえ。」と言う等して口論をしたが、その声の大きさは、向き合った者の普通の会話よりは大きかったにしても、大声というほどではなかった。
右口論の後、原告が川本の右側を通って、自転車置場の中央寄りに何歩か進んだが、川本がその後を追いかけ、原告の前へ回り込んだので、原告と川本は対面状態になった。そこで、原告は、川本を避けて、前記ドアの方へ引き返したところ、再び川本が追いかけてきて、ドアの前でまた対面状態になった。その時、川本は、自転車置場の南寄り中ほどで口論が始まったころから事件を目撃していた栗林に向かって、普通の会話よりもやや大きな声で、「蹴られた。栗林君見たやろう。」と言い、これを聞いて、原告も川本に蹴られたわけではなかったが、「川本に蹴られた。栗林君見てたやろう。」と言った。しかし、当時自転車置場には多数の単車等が置かれており、栗林の位置からは、原告と川本の下半身は単車等の陰になっていたので、原告が蹴った状況等は目撃していない。
その後、原告は食堂前廊下に面している全郵政の組合事務所に向かい、川本は反対側の階段の方へ向かって、両者別れており、口論が始まってから別れるまでの時間は、長くても二分程度の短い時間であった。
なお、事件現場の自転車置場は、集配用や局員の通勤用の単車等の置場であるので、一般の人の出入りはない上、局員も朝夕の出・退勤時以外には自転車置場に来ることはほとんどなく、本件事件当時も、自転車置場には、原告、川本及び栗林以外には人はいなかった。
また、当日は、川本は、厚手のタイツをはいた上に制服を着用しており、原告は、当日、雨模様であったため、ゴム長靴をはいていた。
(<証拠・人証略>)
2 争点1(一)について
本件事件の際の原告と川本の身体の接触については、原告は、当初出会い頭に右足の先が触れ合ったが、蹴ったことはないと述べ、これに対し、川本は、別れ際に原告に一回蹴られたと述べ、両者の供述は相反する。そして、前記認定のとおり、当時、本件事件の現場付近には、原告、川本及び栗林の三名しかおらず、栗林も蹴ったかどうかは目撃していないので、原告が蹴ったことを認めるに足りる客観的な証拠は乏しいといわざるを得ない。
もっとも、被告は、川本が原告に蹴られたことにより負傷したと主張し、また、川本が本件事件後、右下腿打撲傷が存在する旨の医師の診断書を取得していることは、前記争いのない事実記載のとおりである。しかし、前記認定のとおり、本件事件当時、原告は、固い革靴ではなく、軟らかいゴム長靴を履いており、川本も足首まで届く厚手のタイツを履いた上に、制服のズボンを着用していたのであるから、原告が川本の足を蹴ったとしても、川本の述べるような要治療日数の合計が一二日間にも及ぶ打撲傷(<証拠略>)が生ずるとは考え難く、仮に、右のような傷害が生ずるほどの強い力で蹴ったとすれば、原告が持っていたコーヒーが飛び散り、両名の衣服等にかかっているはずであり、その跡がないのは不自然である(<人証略>は、現場の床には、コーヒーのこぼれた跡が残っており、これを確認したと述べているが、原告は、川本と鉢合わせになった際、手に持っていたコーヒーが若干こぼれたと述べており、右説明に不合理な点は認められない。)。さらに、右のような強い力で蹴ったとすれば、栗林は、原告と川本の上体の動きや、原告の痛そうな動作等により、蹴ったことに気が付いたはずであると考えられるが、逆に、蹴られたという川本の訴えを聞いてほんとかなと思ったと述べており(<証拠略>)、また、蹴られたとする割りには、原告と川本は、比較的簡単に別れていることも前記認定のとおりである。
そして、(人証略)の証言中の原告が川本を蹴ったとする被告の主張に副う部分も、本件事件の直後に、原告、川本の直属の上司として双方から事情を聴いた際に、川本が蹴られたと強く主張している上に、川本から前記のような診断書が提出され、川本の脛のあたりが赤くなっていたように身受けられたことから、推認した結果を述べているのにすぎず(<証拠略>)、右診断書記載のような傷害が原告の暴行によって生じたことを認めるに足りる的確な証拠は存在しない(被告主張の本件事件の背景、動機等の事情から原告による暴行の存在を推認することはできない。)。
以上のとおりで、原告が本件事件の際に、川本を蹴った事実を認めることはできない。
3 争点1(二)について
前記認定のとおり、本件事件において、原告が川本と口論をし、多少の感情的発言の応酬もあったことが認められるが、その声は普通の会話より若干大きいものであったにしても、大声というほどのものではなく、また、前記認定の本件事件の経過によれば、川本と鉢合わせになり、コーヒーがこぼれたことから、原告が川本に対して、抗議の趣旨の発言をしたことが本件事件の発端であると認められるが、被告の主張するように、先ず原告が川本に暴言を浴びせ、これが発端となって本件事件が発生したとはいい難く、これを認めるに足りる証拠も存在しない。
もっとも、郵便局を「辞めてしまえ。」等という言葉は、確かに穏当ではなく、公務員の発言としては、相当性を欠くものといわざるを得ないが、右言葉が発せられた場所は、集配用や局員の通勤用の単車等の置場にしか使われていない地下の自転車置場であって、一般の人が立ち入ることはなく、通常は局員も昼休み中にすら立ち入ることのほとんどない場所であり(<証拠・人証略>)、現に本件事件当時、現場付近にいたのは、栗林一人であったことは、前記認定の通りである。このような場所で、同僚同士がごく短時間、しかも休憩時間中に、互いに大声とはいえない声で言い争いをしたことをもって、直ちに職場秩序を乱す行為とまで認めることはできない。
4 争点2について
以上によれば、本件処分は、原告が休憩時間中に、人けの乏しい場所で、ごく短時間、大声とも言えない声で同僚と口論したことをもって、懲戒事由としたものといわざるを得ないところ、前記のとおり、原告の右行為が直ちに職場秩序を乱すものとは認め難い反面、人事院により戒告処分に修正されたとはいえ、本件処分により、人事考課や昇給、昇進等において原告に相当の不利益が生ずることは明らかというべきである。
さらに、被告が本件事件の背景事情となっていると主張する別件事件においては、前記争いのない事実記載のとおり、坂井は、勤務時間中に、執務場所で、川本の胸ぐらを掴むという暴力行為に及び、そのため付近にいた職員が制止する(その職員は仕事を中断することになる。)という騒ぎになり、当然職場秩序が乱されたと考えられるのに、坂井は何らの懲戒処分を受けておらず(<証拠略>)、この別件事件に対する被告の対応と対比すると、本件処分は異常に重く、そのような差異を生ぜしめるのを相当とするような合理的な理由は見当たらない。
そして、公務員に対する懲戒処分については、確かに懲戒権者に一定の合理的裁量権が認められるべきであるとしても、前記諸事情に照らせば、その余の点について判断するまでもなく、本件処分は、本件事件に対する処分としてはなお不当に重く、相当性を著しく欠くというべきであり、裁量権の範囲を逸脱する違法なものとして取り消されるべきである。
第三結論
以上によれば、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 笠井昇 裁判官 菅野雅之 裁判官 渡邊正則)